送電線のがいしの種類
まとめるとこれには、懸垂がいしや長幹がいし、そして近年普及し、従来とは材質を変えたポリマーがいしなどがある。
・懸垂がいしのキャップの種類
懸垂がいしの上部についているキャップには種類があり、クレビス形とボールソケット形がある。
クレビス形は、内陸部で使われる普通の懸垂がいしでよく見られ、ボールソケット形は、254mm(がいしの直径)以上や、沿岸寄り(塩害地域)で使われる耐塩懸垂がいしで主流となっている。
なお、下記の写真では、各ソケット形状と各部名称を記した。
254mmかつ、内陸部で主に使われるクレビス形
塩害地域で使われる254mm耐塩懸垂がいし他、254mm以上で主に使われるボールソケット形
この形にはコッタボルトはなく、ボールソケットの内部に、がいしのピンを差し込んで割ピンで固定する構造としている。
・懸垂がいしの使用例
懸垂がいしについては、いずれとも耐張鉄塔、I吊の懸垂鉄塔、V吊の懸垂鉄塔など、幅広い用途で使われる。
左から順に、耐張鉄塔、I吊の懸垂鉄塔、V吊の懸垂鉄塔
・懸垂がいしの種類
<180mm懸垂がいし>
33kV以下の送電線で使われる。
福沢線で使われる180mm懸垂がいし
実物
これまた旧型の近代仕様とでは、ヒダの数に違いがあり、近代仕様は4枚ヒダだが、旧型では3ヒダも実在している。
<254mm懸垂がいし>
送電線で使われるもので最も一般的なものであり、66kVや154kVで使われる。
また、内陸用と塩害地域用では、多少形状も異なる。
なお、ソケット形状についてだが、一応254mmの普通の懸垂がいしでもボールソケット形がある。
これについては、破壊荷重が大きくなったもので存在している。
一般的な内陸用の254mm懸垂がいしの破壊荷重は120kN(12000kg)だが、実は普通の254mmでも破壊荷重を165kN(16500kg)としたものがあり、その方でボールソケット形がある。
<内陸用>
普通の懸垂がいし
榑坪線で使われる254mm懸垂がいし
実物
これはごく一般的な120kN(12000kg)であるから、ソケット形状はクレビス形
近代の製造年は、西暦の下2桁が印字される。
こちらについては、2015年製となる。
普通の懸垂がいし
(少し破壊荷重を大きくしたもの)
破壊荷重を少し大きめにされた165kN(16500kg)のものでは、254mmの普通の懸垂がいしでも、ソケット形状をボールソケット形としたものもあるようだが
実際にそれが使われている送電線は、まだ見た例がない。
近代の製造品の破壊荷重は、kNで表記されている。
製造年は、2022年(令和4年)
一方こちらは、同型で茶色で古いもの
こちらは半世紀を超えた古いものであるから、西暦は4ケタ全て印字されている。
1962年(昭和37年)9月の製造品となる。
それから破壊荷重は、16500kg(165kN)で表記されている。
なお、このがいしが茶色であるのは、かつては10個ごとの識別用として使っていたからである。
(現在は山の中の送電塔など、周辺景観を意識した箇所でも使われるようになっている。)
旧製品と新製品の比較
がいしの磁器の突き出ている箇所の厚みが少し変わったと思われる。
古い方は少し薄くなっている。
<塩害地域用>
1.耐塩懸垂がいし
海に近い沿岸寄りや化学工場付近など、汚損が甚だしい場所を通る送電線で使われる。
普通の懸垂がいしよりも深溝構造としており、がいしの表面漏れ距離(接地部と充電部までの距離)を長くしている。
66kVでの使用例
154kVでの使用例
送電電圧が高くなるほど、また沿岸部に近くなればなる程、がいしの個数は増える。
実物
2.スモッグがいし(旧式)
これについては、別名、耐霧がいしとも呼ばれる。
ソケット形状については、ボールソケット型に限る。クレビスソケットはない。
耐塩懸垂がいしと同様に、かつては沿岸寄りの地域や化学工場付近、濃霧の発生が多い場所を通る送電線で使われていた。
違いは外ヒダが大きく突き出ていることであり、初期型と後期型では外ヒダの数なども変わる。
現在残っているものでよく見かけるのは後期型であり、これは昭和40年代頃まで大いに普及していたが、近年では経年劣化のため、年々数を減らしている。
66kVでの使用例
<280mm懸垂がいし>
275kVから500kVの送電線で使われる。
なお、ソケット形状については、254mmを超えるとクレビス型はなく、ボールソケット型のみとなる。
<320mm懸垂がいし>
同じく500kVの送電線で使われる。
また、スモッグがいしも320mmのものが実在しており、中部電力の渥美火力線では、塩害地域で一部使用していたそうだ。
500kV設計の南新潟幹線で使われる320mmと思われる内陸用の懸垂がいし
実物
<400mm懸垂がいし>
高強度クラス!
さらにどでかい400mm懸垂がいしは、1000kV設計の送電線で使われるものかと思われる。
ちなみにそれよりもさらに高強度とした、440mmや460mmもあったようだが、それは買おうとした時には、生産終了品となっていた。
1000kV設計の西群馬幹線で使われていると思われる内陸用の400mm懸垂がいし
一方こちらは、耐塩用の400mm懸垂がいしの実物
耐塩用は、がいしの表面漏れ距離を長くするため、外側の溝が深くなっている。
配電線の高圧ピンがいしとの比較
・懸垂がいしの色の種類
白の他には、他の項目でも一部写真を出したが、茶色や青色もある。
いずれとも白の懸垂がいし連の10個ごとの識別用として、色違いのものを入れていたが、最近では青色のものは廃止となっている。
また、茶色については、近年では周辺景観を意識した箇所で目立ちにくくするため、白の代わりに採用している箇所もある。
10個ごとの識別で使われる青色の懸垂がいし
こちらも耐塩型などがあるようだ。
茶色についても、元は10個ごとの識別で使用されていた。
その後は、景観を意識した場所でも使われるようになった。
<ガラスの懸垂がいし>
これは配電線を含めて、国内での普及はほとんどなく、景観対策や試験的に採用した箇所などで、かなりの稀で見かける程である。
東京電力管内では、高崎線や北軽線、上信線などであったが、いずれとも姿を消している。
写真は、上信線でかつて確認できたものによる。
<長幹がいし>
大きさによる種類は多数ある。
用途についてだが、地方の電力会社では、そのまま送電線の引き留めや引き通し箇所などで、V吊にがいしを組んで使われるが
東京電力管内では、送電線の引き出し箇所やジャンパー線の支持用で使われることが多い。
送電線の両引き留め箇所とジャンパー線支持用で使われる長幹がいし
<ポリマーがいし>
最近では、材質にシリコンを使用したポリマーがいしも普及しているが、その普及数はまだまだ少なく、東京電力管内では、ジャンパー線支持用で見かける例が多い。
今のところこちらでは、青色(大和線)や茶色(花見川線)のものを見かけている。
中実SPがいし・支持がいし
(SP:Station Post Insulator・和訳:ステーションポストがいし)
これは変電所構内で、母線を支持するために使われる。
普通ヒダ、下ヒダ、深ヒダなど、ヒダの種類も複数ある。
コレクションのSPがいし
日本ガイシさんの製造品で、製造年は1969年(昭和44年)とあった。
高さは測ったところ、235mmであった。
当時の碍子要覧を見ると、SPがいしの中では、これは2番目に小さいものとなる。
SSP-10というのは型式である。
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