猪苗代旧幹線

(本線の紹介)

※日本初の115kV!!建設当初は世界第三位を誇った!

(当初の管理:猪苗代水力電気會社 建設:アメリカ人の技士が指導)

猪苗代旧幹線ができたのは大正3年(1914年)のこと
猪苗代第一発電所については、一部竣工したのは大正3年10月で、大正3年12月には一部の需要に向けて、初めて送電が開始されたようである。
なお、発電所自体の完全竣工時期は、大正4年3月のことのようであり、この時期より本格的に送電が開始されたようである。
送電線の起点については、福島県の猪苗代湖北西方面に位置している猪苗代第一発電所(猪苗代第二発電所を含む)から、現在でいう東京都北区にあたる田端変電所までの数百キロの区間を結んでいた。
管理については、当初は当時実在していた猪苗代水力電気會社が受け持っていたようだが、後にその企業が東電と合併したため、管理は東電に任された。

竣工当時の絵葉書
大正4年3月とある。完全竣工された時期だ。

起点の猪苗代第一発電所の水管

竣工当時から変わっていない模様

変電所の直前にある猪苗代旧幹線(山) 40号鉄塔

猪苗代第一発電所の全景・iPhoneXRで撮影

発電所の右側には珍しく、送電設備に関する説明があった。
当時、発電所の建屋には、東京駅と同じ赤レンガが使われたんだとか!

猪苗代第一発電所の看板

一方こちらは珍しい、タイダウン装置適用箇所!

これについては、確認できたところでは、2基確認!

続いてこちらは、耐張鉄塔の猪苗代旧幹線235号

送電電圧については、日本国内で初めてとなる十万ボルト級送電線路を採用した11万5千ボルト(115kV)送電線路となるが
現在は送電電圧がそれより昇圧されており、大正3年から現存する旧鉄塔も、一部では送電電圧昇圧に伴い、がいしの増結や腕金の改造も行われている。
(※ちなみに送電電圧昇圧に伴わず、全く鉄塔が改造がされていない猪苗代旧幹線同様の鉄塔といえよう支持物は、片品川線の山越え区間に実在していたが、これも今は現存していない。)
なお、国内で初めて十万ボルト級送電を達成したことから、初期の頃は、世界第3位を誇る架空送電線路であったらしい。
一方、建設当初の送電がいしについては、一時期、片方はアメリカのトーマスエンドソン会社製の懸垂がいしを、もう片方に国産の懸垂がいしを使用し、どちらのがいしが丈夫であるかの試験も行ってきたとの情報もある。
(※トーマスエンドソン会社製の懸垂がいしは、後に現在の日本ガイシさんのがいし製造決意の発端になる。)
次に、送電鉄塔に使われている鋼材についてだが、これはCARNEGIEの刻印が確認できたことから、アメリカのカーネギー製鋼会社製(現:USスチール)かと思われた。
しかし記念帖には、鋼材はカーネギーではなくアメリカンブリッジ会社との表記が見られた。
これはカーネギー製鋼会社と合併される前であったから、そのような表記があったのだろうか?
もしくは工事会社がアメリカンブリッジ会社だったのだろうか?
※送電塔の鋼材では、横浜のかの有名な港一号橋梁のように、アメリカンブリッジカンパニー(会社)の刻印は確認していない。

猪苗代旧幹線の原型の斜材付近で見つけた「CARNEGIE」の文字
(235号とは別の場所で撮影)

しかしいずれにせよ、使われていた鋼材はアメリカ製であったことは変わりない。
そして、群馬幹線もそうであるが、アメリカの鋼材を使用したものは、国産鉄塔とは別の形状をしている。
(そのため、個性豊かな送電線だったんだがなぁ。群馬幹線の原型鉄塔が全滅したのは残念だ。)
なお、当時の猪苗代旧幹線の鉄塔の組立光景や利根川越えの写真などについては、「特別高圧送電線路の研究 大正10年8月28日発行(特別高圧送電線路ノ研究 大正十年八月廿八日発行)」をご覧頂きたい。
これについては、国立国会図書館のデジタルコレクションで公開されている。

↑建設当初の猪苗代旧幹線に関する情報のある文献
唯、戦前の文献なので、文章は全てカタカナで明記されている。

それにしても当時の鉄塔は、地面に横にして鉄塔を組み立ててから建てていたようであるから、驚きである!!

↑完全なる当時物の115kV(115,000V)設計の猪苗代旧幹線の鉄塔のイメージ
<<写真は片品川線の山越え区間のもの>>
※猪苗代旧幹線では、現状115kV送電時代の完全なる原型鉄塔がご覧になれないため、片品川線で特別に採用された箇所を参考までに掲載!

一方で、竣工当時の写真についてはこちらに沢山載っていた。
送電電圧昇圧前の様相については、正に片品川線の山越えで確認できた送電塔と形がほぼ一致していた!
それから大正4年当時の田端変電所の写真などもあった。
他には、他電線路との交差写真も全て撮影されたようだ。

※猪苗代旧幹線は、建設当初としては世界第3位を誇った歴史深い幹線系であるから、猪苗代旧線で使われた2条地線設計の頑丈そうな鉄塔は
当時、送電電圧が低すぎて、中々贅沢な鉄塔を使わせてもらえなかった電圧の低い66kV系統でもきつい山越えカーブの振り分け箇所に限っては、特別に!猪苗代旧線の鉄塔を採用した送電線路がある。
(大正〜昭和初期頃までは、154kV以下の送電線に限っては、長距離送電線路であっても、当時は支持物は木柱が主流であった。)
それは何かといえば、後述で紹介中の片品川線(片品川線ができた頃の支持物は鉄柱中心)や金井線である!

猪苗代旧幹線の旧鉄塔の写真
日本初の115kV系統に相当する歴史的送電線路であるが、現状電圧は154kVのため、鉄塔はやや改造されている。
改造については、途中の送電電圧昇圧に伴い、中相の腕金が細くなったり、がいし連も増結されたりした。
写真は猪苗代旧幹線440号鉄塔!
猪苗代旧幹線の完全なる原型は、片品川線の紹介ページへ!

建設年はこの通り!大正3年(1914年)7月建設!!

立ち並ぶ大正3年(1914年)建設の猪苗代旧幹線の原型鉄塔
架空地線の条数については雷害を考慮したのか、珍しい2条地線であった。(これはその頃、近いうちにできた群馬幹線も同じ。)
なお、今は増強ばかりで、こういった形の鉄塔は、首都圏近郊ではほとんど見られなくなったが、昔はしっかりと東京都にある田端変電所までをこの形の鉄塔で結んでいたようである。

若干の角度を振る猪苗代旧幹線427号
(※この付近の鉄塔は、防錆塗装が施されていないため、じきに建て替えの危機あり。)

当時実在していた猪苗代水力電気會社が、現在でいう猪苗代旧幹線の建設を受け持っていた頃の絵葉書
さすがは当時は世界第3位を誇る架空送電線路であったから、絵葉書にもなったのだろう。
(※ほぼ100年近い前のもので、著作権の保護期間は終了していると思ったため掲載に至った。しかし、最近のネットは、凄いものが手軽に手に入る。
それもこの絵葉書は、丁度、猪苗代旧幹線の撮影に行こうかと考えていた時に偶然にも手に入ったのだった。(笑))
赤い線で書かれたものが今でいう猪苗代旧幹線であり、右側にある猪苗代発電所から左方面にある田端変電所までを結んでいるのが見て取れる。
そして図には、まだ猪苗代新幹線については書かれていないため、この絵葉書は大正15年以前のものであることがうかがえる。
しかし、書かれている各都道府県名には歴史を感じる。

裏面はこんな感じ。当時の猪苗代水力電気會社の文字がある!
勿論、字の書き方は戦前の右からである!

利根川横断箇所の猪苗代旧幹線の様子
(利根川越の特殊サスペンション型鉄塔)
大規模な川を超える箇所となっているためか、鉄塔の形が違っている!
こちらは2条地線を支持する大きなかんむり型の腕金がない。それにがいしの吊方はV吊である!
続いて右上にあるのは、猪苗代旧幹線の電線路の途中にあった古河開閉所の様子だろうか

次いでその右後ろに小さくあるのは、言わんばかりの2条の架空地線を張って、鉄塔部材にアメリカ製のカーネギースチールを使用した猪苗代旧幹線の原型による耐張鉄塔かとは思うが
こちらは通常仕様の鉄塔とは違い、利根川越の特殊ストレーン型鉄塔かと思われる。

そして当時の終点の田端変電所の様子
6つの黒い物体のようなものはブッシングであり、ここで2回線の猪苗代旧幹線を引き込んでいたことだろうと思われる。
右下には変電所内部の写真もある。
(※現在この付近には、千代田線という猪苗代旧幹線増強後の4回線鉄塔が建っている。↓)

現在の田端変電所北側の様子
左後ろに見えるのが田端変電所へと引き込まれる直前の千代田線36号鉄塔である。

昭和22年(1947年)当時の、田端変電所へ向かうカーネギー製の猪苗代旧幹線の鉄塔を上空から眺めるのなら、こちらをクリック!
↑これは現在の東京都足立区で撮られたようである。
明らかにこれは、中相の腕金改造前!(送電電圧昇圧前)の115kV時代の猪苗代旧幹線の鉄塔である!
昔はこれが福島からずーっと!田端変電所まで続いていたというのだから驚きである!

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